お客を選ぶ?バー

京都木屋町四条にある某Jozz&barは私のお気に入りだ。十数人で一杯になるカウンターと小さなボックス席だけのこじんまりとした店だが、ここは女性客が多い。ものすごくハンサムなバーテンダーがいるから、ではない。お客の品が良いので安心できるからだ。女性のグループとか、年配のご夫婦とか、静かに飲んでいるビジネスマンとか、だいたいそういう感じなのだ。かくいう私も、仕事帰りに近くまで来たら、ひとりでもぶらっと寄る。

オールバックにヒゲをたくわえたマスターと、長い黒髪をひっつめたユーミン似のママが、カウンターの向こうで「おっ」「いらっしゃい」てな感じで迎える。二人はご夫婦で、ジャズのレコード(CDではない)をかけながら客の話を静かに聞く。客にお愛想を言うわけでもおだてるわけでもなく、常に一定のテンションで仕事をしている。妙なお世辞を言わないので、友だちのように自然な会話ができて非常に落ち着くのである。ある時などは友人とふたりドアを開けると、カウンターに見目麗しい美女がずらっと並んで座っていて、私たちを含め全員が女性客という時もあった。

また、こんなこともあった。この日はママだけしかいなかったが、中年のおじさんたちがどやどやと5人入って来て奥のボックス席に座った。ママがおしぼりを出す。2〜3人が「え〜!!ここカラオケないの〜!」とわめいている。「ウチはバーですから」とママが言う。聞くのもおぞましい話を大声でしながら、その中の一人が煙草を取りだした。煙草を指に挟んで火を待っている。ホステスなら必ず火をつけてくれる、だがママはボックス席に行かない。30秒、40秒、1分・・客の顔色が変わりそうになるころ、やっとライターを持って「どうぞ」とテーブルに置く。その男性は怒り心頭。立ち上がって「なんじゃー!この店はサービス悪い店や。火もつけへんのかー!!!」

「ウチはバーですから」と淡々と一言。

 プッチ〜ンと切れた怒りの御一行さまは、そのままお帰りになったのであった。カウンター席の客は皆ママを見て苦笑。「そやかてあんなお客さんにしょっちゅう来られたら、本当に来てほしいお客さんに来てもらえなくなるし」「煙草の火ぐらい私だっておつけしますよ。でも偉そぶるわけじゃないけど、やっぱりこちらもお客さんを選ばせていただくっていうか」とママは言ったもんだ。私はなるほど〜と思った。

どんな商売にもこのことは当てはまる気がする。私の事務所ハーズなら、本当に来てほしいお客さまとはどんなお客さまなのか、ちゃんと考えてみることも必要だ。それにしても、このバーの客で一番うるさくて下品なのは、実は私だったりなんかして・・・

(2005.5.24)

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